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外国人材受け入れー「政策」ではなく「戦略」を

更新日:2020年11月2日


 2年前、「骨太の方針」: 外国人労働者受け入れ拡大を「成功」に導くためにという記事をnippon.comに掲載していただきましたが、今も多くの反響をいただき嬉しく思っています。ここで伝えたかったことは2点です。1つは、「外国人受け入れはもはや『支援』でも『慈善活動』でもなく、国家の経済戦略かつ世界での国家間競争だ」ということです。たしかに、人が外国に移住するのは、地元では職がなかったり、あったとしても安い賃金だったり、その他諸々の理由で暮らしにくいといった理由がほとんどですから、移住によってより良い生活環境がオファーされることは、その人にとって恩恵的であることはいうまでもありません。しかし、現代において、人は移住先国として複数の選択肢を持っている、ということを忘れてはならない。これは非常に重要なことです。経済の成長や維持のために多くの人手を必要とする国はますます増えています。欧米などのいわゆる先進地域だけでなく、東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカなど、ほぼ地球上の全域で外国人への労働需要が高まっています。このように、労働市場が世界規模で供給過多である時代においては、受け入れ側は、どのようにすればより優れた人材を惹きつけることができるか、ということを真剣に考えなければなりません。これまでのように、発展途上国の人々を支援する、とか、恵まれない人々に救いの手を、といった観点から人の越境移動をとらえることはもはや時代遅れです。この問題は、いったいどうすれば日本が移住先として選ばれるかという「戦略」として考えるべきです。

 これに関連して、2つ目に言いたかったことは、「だからといって外国人におもねる必要はない」ということです。いくら外国人に来てもらいたいからといって、外国人の希望を全て聞く必要はありません。より良い人材を確保する、という観点からはむしろ逆効果ですらあります。自分がどこか外国へ移住を計画していると想像してみてください。いくら多くの国で人手不足だとはいっても、移住しやすい国と移住しにくい国は依然として混在しています。そして、移住しにくい国は、往々にして魅力的な国であることが多い。例えば、米国は比較的高い報酬(給料)、多種多様な職場、新規産業を生み出す先端技術を支援する環境、質の良い教育機関、余暇や休日を過ごすのに十分刺激的な文化施設など、経済・社会インフラの質が極めて高い国です。そして、米国に移住するには比較的高いハードルがあります。高度な(専門)知識・技能を持つ、米国社会に有用な人しか移住に成功できないわけです(実際はもっと多様な移住のケースがありますが、ここでは、とにかく競争率が高いということをお分かりいただければと思います)。しかし、ハードルが高いからこそ、米国には多くの優れた人材が集まり、結果として米国の経済成長や社会の発展にもつながっています。この全く反対のケースを想像してみてください。もしある国への移住のハードルが低い場合、その国へは他の国に移住できなかった人がやってくるでしょう。「あの国なら懸命に社会に溶け込もうとしなくてもやっていける」「言葉を覚えなくても、ルールを守らなくても問題ない」というような人々がやってきたとして、果たして彼らは国の発展に尽力してくれるでしょうか。もちろん、外国人に対する深刻な人権侵害や差別は決して許されるわけではありません。しかし、外国人が「好き勝手にできる国」になってしまっては、その国の発展はあり得ないでしょう。「外国人に寛容な国」とは、外国人も国民も一緒にその国の発展に汗を流そうとするような、ワクワクするようなチャンス満載の国でなければならないのです。

 そういう国をつくるには、外国人に適切なレベルで日本文化を習得してもらう必要がある。言語にしても歴史にしても、共感してもらうことが大切です。それを強制する形ではなく、外国人が進んで溶け込もうとする形で可能にするには、日本がその魅力を高めるよりほかはないわけです。この意味で、外国人受け入れの問題は、回り回って日本の発展のあり方を考えることにつながります。外国人問題は、したがって、一部の関係者だけ、また専門家だけが考えればよい、という問題ではないのです。そうではなく、我々日本人ひとりひとりが真剣に考えるべき、非常に大切な経済(社会)活性化の問題なのです。



#外国人材受け入れ#骨太の方針#経済活性化

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