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編著『世界変動と脱EU/超EU』が出版されました!

 1年近いプロジェクトを経て、ようやく世界変動と脱EU/超EUーポスト・コロナ、米中覇権競争下の国際関係』が刊行されました。私はこれまで、人の越境移動研究と並行して国際連携についても関心を寄せてきました。EUを研究対象としたのは、両方のテーマを合体させて分析できるエリアだったからです。いわゆる地域研究者や一部比較政治の研究者とおそらく少し違うだろうな、と思うところは、研究をはじめた当初はこのエリアにそれほど深い思い入れはなかったということだと思います。もちろんヨーロッパは成熟した文化と錚々たる歴史を持つ素敵な国がたくさんありますし、大好きな地域であることは確かです。しかし、独特の知的関心からヨーロッパやヨーロッパの国々を深く研究してみたい、という動機はなかったということです。以前にも少し触れましたが、何をおいても国家間の連携の密度を常に高めようとする、そして、構想が理想に終わらずある程度実現している地域はヨーロッパをおいて他にはありません。世界の他の地域ではできていないことがなぜこの地域では可能となったのかということを追求したいという、そういった動機から、私は欧州統合の研究をはじめました。

 さて、この問題意識、もちろん私が独自で考え出したものではありません。学部生時代はそれほど研究熱心ではありませんでした。振り返るに私はとても幸運だったと思うのですが、いつでも周りに私に素晴らしい知的刺激を与えてくださる先生方、そして友達がいました。ここでは詳しくは触れませんが、ある先生が「これからの欧州研究は欧州の数カ国に目を配る研究になっていくだろう」と呟かれ、その言葉が頭に引っかかっている折に欧州統合の本に出会ったことがきっかけでした。その本のことについては、また別の機会にブログで紹介したいと思っています。

 ともあれ、今度の新刊は、欧州各国研究の、そして、米国、中国、ロシア、トルコ、国連研究の第一人者の先生方にご執筆いただきました。さらに、ポスト・コロナというキーワードに目配りいただきながら、世界の構造変化との関わりという観点から国内政治変化を分析していただく、という、難しいテーマをお願いしました。それこそコロナ禍のために現地調査もままならぬ中、みなさんから非常に質の高いご論考をいただきました。

 岡部なのに人の移動がテーマではないのか?といぶかる声もあるかもしれません。確かに、本書は移民、難民政策、出入国管理など、人の越境移動を直接にテーマとするものではありません。しかし、人の越境移動やその管理についての国際協力が、いかに他の分野の、また総合的な国際協力体制(ここでは欧州統合のあり方)に影響を及ぼすか、ということを核心的な問いとして設定しています。私は、マイグレーションに関心がある方、一般の国際関係に関心がある方の双方に読んでいただけるような本を書きたい、と常々思ってきました。今回は、素晴らしい執筆者の先生方のご協力で、その夢が叶ったのではないかと思っています。どうぞ皆さま、ご関心の向きはぜひご一読いただければ幸いです。


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