バイデン政権後のマイグレーション・ガバナンス

更新日:2020年11月17日

難民問題は古くからあるけれど、支援のための国際協力体制はなかなか整備されません。今回は、ひとまず前回の続きはお休みして、大統領選挙後の新しい米国が人の国際移動管理(マイグレーション・ガバナンス)にどう影響するかを考えてみたいと思います。


バック・トゥー・ノーマル?

トランプ政権は、それまでの米国政治(や世界政治)における「あるべき姿」を当然とせず、むしろそれに真っ向から挑戦するという意味で特徴的でした。つまり、人種差別には断固反対する、マイノリティを支援する、その他性差別などあらゆる差別の克服を目指すといった考え方を「ポリコレ(政治的に正しい考え方)」と決めつけ、実際には全ての国民のニーズに応えるものではない、とうったえました。

2016年の大統領選挙では、このうったえが多くの選挙民に響きました。当時よく言われていたことですが、トランプ氏の支持者の中には、いわゆるWASPと呼ばれる米国での上層の階級に属する白人に限らず、アジア系、アフリカ系、ヒスパニック系などの人たちも少なからず含まれていました。これが何を意味するか、というと、いわゆる「ポリコレ」のアプローチは、必ずしも差別やマイノリティ保護の問題への本質的な解決策ではなかった、ということ、そして、そのことに米国に住む多くの人々が既に気づいていたということを意味します。この問題は社会に深く根差すもので、トランプ政権からバイデン政権に代わったところで、そう簡単に解決できるものではありません。ですので、「これで米国は元に戻るのか?」という質問に対しては、NOという答えになろうかと思います。


なぜ民主党政権は人種差別撤廃やマイノリティ保護ができないのか?

けれども、他方でこんな疑問を抱く人もいるかと思います。「民主党政権はかつてから国内の社会的な格差の問題を重要視してきたじゃないか。」と。確かに、民主党はDACAやDream Actと呼ばれる制度を導入し、違法入国・滞在者の未成年の家族が米国で合法的に生きる道を提供したり、医療制度改革を行い経済格差の解消を図ったりしてきました。医療制度改革、いわゆる「オバマケア」については大きな欠陥があり、そこは批判すべきところです。しかし、今日のテーマとの関連では、私は敢えて、オバマケアは正しい方策だったが、DACAやDream Actはそうではなかった、と主張したいと思います。


DACA, Dream Actの欠陥

DACAやDream Actがなぜよくなかったのか?この法制度自体に問題があるわけではありません。発展の余地はあると思いますが。そうではなく、外国人の保護をするとき、本国民である米国民の弱者、貧困層へのケアが同時になされなかった、ということが問題なのです。難民や違法入国・滞在者、移民への対応をするときに重要なのは、本国民に対する配慮です。実は、この問題はかつてはそれほど気にする必要はありませんでしたが、グローバル化が進んだ現代においては、避けて通れない問題となっています。

いわゆる「ポリコレ」に執着する人たちは、このことを度外視しています。それが意図的なのか、そうでないのか、ということを含めて、なぜ移民の権利や難民の保護を考えるときに本国民の福利厚生への考慮が必要なのか、ということについて、次回お伝えしたいと思います。



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